20170407

「私の個人主義」 夏目漱石 著

 

<概要>

西洋思想を取り入れた明治時代の社会の変化とその危うさ,人のあり方に関する忠告。①現代文明の本質は専門化・分業化=一人では生きられない,②現代日本の開化は外発的開化=上滑りの開化,③中身は形式に先立つ・変化の時代は内面の変化を生む,④文芸は道徳と密接な関係にある,⑤個人主義(=党派心のない理非のある主義)のススメ

 

 

<ひと言コメント>

今の時代にも通じる「大きな変化の時代」の本質と個人のあり方

 

 漱石と言えば,「吾輩は猫である」「こころ」などで有名ですが,これは学生向けの5つの講演を評論文としてまとめたもの,で,私の大好きな書です。明治維新という大きな変化が起きた時代,この時代の変化の本質(①)・変化の実態(②)・変化がもたらすもの(③)・その中で文芸が果たす役割(④)を示すとともに,そんな変化の時代への向き合い方・態度(⑤)を提案しています。

 漱石は,英国への留学で心身を患いました。本書でも示されるこの鋭い洞察力と傷つきやすさとがその原因とも言われますが,だからこそ,その体験をも背景とした提案は,「第4次産業革命の時代」と言われる今の時代でも大いに参考になるのではないでしょうか。