「「聴く」技術が人間関係を決める」 宮城 まり子著

 

<概要>

「本当の聴く力を身につけることの目的と意味,聴き上手になるためのヒントを,臨床心理士という聴くことを仕事とする著者が提示するもの。本物の聴く力は相手の心を満たすこと,で,聴く訓練も本来は必要。聴き上手になるコツをつかんで聴き上手になれば,話す側からの信頼を得られ,良い人間関係を築くことができる,とする主張」

 

<ひと言コメント>

心理学者のアドラーは「人の悩みのすべてが人間関係の悩み」と言っていますが,そこまで言わずとも互いを理解するためのコミュニケーションは大切と思います。本書は相手を理解するためのコミュニケーション手法としての聴き方(聞き方ではありません)を,相手の話を聴くことを仕事にされている著者がまとめています。確かにどれぐらい人の言うことを「聴いているか?」と言われると耳が痛い・・・。一方で「聴いた後どうするのか?」がコミュニケーションだよな,と思います。


「この国の冷たさの正体」 和田 秀樹著

 

<概要>

「「自己責任論」であり,それが現代日本で声高に叫ばれているのは強者の保身と欺瞞のためであることを示すもの。日本における自己責任論は,自由の対価としての自己責任論ではない。その事実とからくり=冷たさの正体に気づけば,人々はやさしさを取り戻し,それは自分を苦しめないことにもつながる,つまり 健康で文化的な最低限度の生活を営む(=生存権の行使)ことにつながるはずだ,とする筆者の考え」

 

<ひと言コメント>

「人に親切にしよう! 仲間同士助け合おう!」

私が子どものころにはよく聞いた言葉です。今の子どもたちもきっと同じように学ぶのではないか?とも思うのですが,心底そう思えるのかな? とギモンに感じています。というのも大人の世界,社会を見渡すと,世知辛さ(=冷たさ)を強く感じるから。膨大な著書があり多くの肩書も持たれる著者は,「冷たさ」の原因を「日本流の自己責任」という言葉に見出されています。


「コミックでわかるアドラー心理学」 向後 千春著

 

<概要>

「アドラー心理学のポイントとその活かし方をストーリー仕立てのコミックの中で提示した,アドラー心理学を社会に広めるための入門書。アドラー心理学の,心理学上の位置づけ,構成要素とそのポイント(主体性・目的論・全体論・仮想論・社会統合論),自分と人類の幸福への歩みのために必要となること(ライフタスクと共同体感覚)といった概略と,その活かし方の一例の提示」

 

<ひと言コメント>

5年ほど前まで,勉強不足で耳にしたことがなかったアドラー心理学。

最近では関連書も含め書店で一大勢力となっています。

本書のような入門書で,アドラー心理学をしっかり学ぶ前に,ポイント把握とその活かし方の一例(=有用性)をつかむのは一考の価値があるかとも思います。これは何の勉強でも同じかもしれませんね。


「良心を持たない人たち」 マーサ・スタウト著

 

<概要>

「「良心はナゼ存在するのかの心理学者としての筆者の答えであり,良心を持たない人=サイコパスの具体例・見分け方とサイコパスへの対処法を示すもの。良心を持たない人はアメリカでは4人に一人。一般の人に害を及ぼす上,良心を持たないことが熾烈な競争社会では有利にも見えるが,その末路は哀れ。良心を持つことで他者との関係の中での温かさ・あらゆる感情や愛を感じることができる,とするもの」

 

<ひと言コメント>

「非情の采配」「利益の最大化」などの言葉に代表される効率至上主義・結果至上主義で物事を考えたとき,時に良心を持っていることが妨げになることもあるかもしれません。とすると,人工知能がより発達したとき,それが良心を持たない知能だとしたらどんなことが起きるのでしょう? 人を安易にサイコパスと評価することはもちろんいけないと思いますが,サイコパスと呼ばれる人たちのような行動の理解と研究は重要な視点なのかもしれませんね。


「100分 DE 名著 人生の意味の心理学」 日本放送協会著

 

<概要>

「アドラー著の人生の意味の心理学の解説書。民主主義の世だが本当に対等な人間関係は実現できていない。人生の意味の心理学を読んでアドラー心理学の正しい理解ができれば,実現に必要となるモノの見方や考え方を知ることができ,民主主義の理想・自分の理想(=自分と人類の幸せへ貢献)への歩みを進めることができる」

 

<ひと言コメント>

アドラー著の人生の意味の心理学の解説書であり,TV番組のテキストです。

書店で人生の意味の心理学そのものを探していたのが見つからず,で,解説書である本書に出会いました。

コミックでわかるアドラー心理学を読後,自分の理解とのすり合わせの目的で読み,理解の軌道修正をしました。また,本書でアドラーがユダヤ人であることを知り,ユダヤ人迫害の歴史的事実と,(ステレオタイプ的ですが)だからこそのユダヤ人の知への思い,を想像しました。