20170929

「さあ,才能に目覚めよう」 

マーカス・バッキンガム/ドナルド・クリフトン 著

 

<概要>

 自分の強みを発見・顕在化させ常に完璧に近い成果を得ること,個々人の強みを生かした組織づくりで業績を伸ばすこと,のススメ

「① 強みとは,常に完璧に近い成果を生む能力だ。才能(資質)は,無意識に繰り返される思考・感情・行動のパターンで,強みにまで発展させられる。資質や才能に良し悪しはないが,新たな資質を身につけるのはほぼ不可能。

②才能は,本書にあるストレングス・ファインダーで見極められる

③資質は,アレンジ,運命思考,回復志向,学習欲など,34の資質がある

④才能は,一人ひとり独自で永続的だから,組織は才能を活かせるしくみを人事システムに導入すべきだ」

 

 

<ひと言コメント>

強みを活かす,という発想

 

 日本の社会システムは,極論すると「枠にはめる思考」に基づくもので覆われています。教育システムしかり,入試制度しかり,就労制度しかり(もちろん,たとえばAO入試など,「強みを活かせる制度」もなくはないのですが・・・)

「追いつき,追い越せ」の時代, OutputよりもInputの抑制による生産性の向上の時代には,大いに武器になるしくみでした。しかし,既にInputの抑制だけで何とかなるような時代ではなくなっています。一方でOutputを最大化しようとすると,どうしても新しい価値観や新しい発想が必要。それは「強みを活かすこと」に他ならないでしょう。このように見てくると,「今の日本の社会システムは,強みを活かせるようなしくみにはなっていない」と言えるわけです。

 もちろん危機的な状況と見ることはできますが,当然チャンスと見ることもできます。特に企業にとっては,いち早く個人の強みに着目したしくみをつくり,個人の強みに基づく業務単位,業務フローに組み換えることで,その企業の魅力を最大化できる可能性があるわけです。これは,AIの導入にも同じことが言えます。特定の強みに特化したAIを導入する,人もテクノロジーも強みを活かす。そんな時代が迫っているのではないでしょうか。


20170922

「シンギュラリティ・ビジネス」 齋藤 和紀 著

 

<概要>

テクノロジーの進化のスピードが無限大になるシンギュラリティ。そのインパクトの大きさは? そんな時代に成長するビジネスとは? 先回りし,決断・行動するためのヒント

「①2045年にシンギュラリティを迎えると予測されている。既にプレ・シンギュラリティの時代に突入しており,物事はこれまでと同じテンポでは進まなくなる

②人類の進化・人々の生活に劇的な変化を与えるのはGNR分野(ジェネティクス,ナノテクノロジー,ロボティクス)のテクノロジーの進化。そのスピードは,指数関数的に加速している(エクスポネンシャル)③エクスポネンシャルなテクノロジー進化は,デジタル化に始まり非収益化を経て最後に大衆化する(誰でもできる)という6つの連鎖反応を引き起こす。これはどんな分野でも起きる。つまり,業界の垣根を越える,何でもシェア化が進む

④そんな時代の競争に勝つには,プラットフォームを提供できるか否かにかかる。また,抵抗勢力が生まれるという課題も発生するから,既存事業などの枠組みの外に推進組織を置くなどの工夫,そして何より免疫反応を弱める教育や,むしろ事実を受け入れ推進していく思考を身につけることが必要だ」

 

 

<ひと言コメント>

新しいリスク回避思考のあり方

 

 AIのニュースに事欠かなくなりました。少なくとも今は,Inputの抑制が軸のようですが,Outputの拡大につながる取り組みも始まっています。「シェアリング」はその一つです。マズローの5段階欲求説によれば,安全欲求は人の低次な欲求。つまり,リスク回避志向が強いのは,人である以上当然。「いい大学を出て,大企業に就職する」という人生設計を志向してきたのは当然のことだった,と言えるわけです。ただ,そんな人生設計が,将来を保障しなくなってきた・・・。

 そんな時代のキーワードに,先行・スピード・安全欲求への抵抗力,があります。そして,そんなキーワードを重視することが,逆説的ではありますが,新しい時代のリスク回避思考のあり方なのかもしれません。

 ※志向と思考の言葉,あえて使い分けてます。間違いではないので,念のため・・・


20170915

「日本の競争戦略」 マイケル・ポーター/竹内弘高 著

 

日本の過去の成功は一般的な戦略原理に則ったものであるという事実の確認と,日本が経済再生に向け進むべき道を検討するためのフレームワークの提供

「① 日本型企業モデルはオペレーション効率化中心で戦略は乏しい

②「企業戦略・競合関係」「関連産業・支援産業」「インフラなどの要素条件」「需要条件」の関係性を見るダイヤモンドフレームワークから評価すると,競争力の源泉日本の競争力の源泉は市場要求度の高さと競争にあった

③これまで日本政府は,むしろ競争を阻害するような関与をしてきたが,今後は競争原理が働くしくみの導入を推進すべき

④日本の企業は,競争に対応するしくみの整備し,長期視野の戦略の下,<特化(顧客・商品),人材確保,ノウハウ蓄積のしくみ,スピード,多品種小ロット,グローバル展開>などのいずれかをはかるべき

⑤日本は,人材・勤勉さといった独自性を強みに,分野横断連携・地域や需要でのクラスター化と対応など,長期戦略の視点で対応を進めるべき」

 

 

<ひと言コメント>

時代の変化と変わらぬものと

 

 政府が「働き方改革」を推進しています。動機の一つは2020年の東京五輪です。これだけ多くの人が,昼夜を問わず移動している東京に,多くの訪日客が訪れたとしたら・・・。人が溢れかえるだろう,そして多くの混乱が生まれるだろう,というのは目に見えています。会社ではない場所でも働ける環境やしくみをつくることは,目の前に迫った課題への対応策と言えます。

 でも,その先に待っているのは???

 人口減社会,AIの時代・ビッグデータの時代・・・。競争相手は国内でもなく,隣にいる人々でもなく,世界なのだ,と考えた方がわかりやすいかもしれません。国を上げて,企業が連携して,そして私たち一人ひとりが「どうなりたいか」という目標を持って行動することが必要になるのでしょう。その際大切なのは,日本や日本人の特性・強みを活かすということ,そして,「実際の行動として何をすればいいか」を作っていくこと。筆者の日本分析論は,外国人であり,経済学の第一人者でもあるからこそ,「日本らしさ=強み」をあぶりだすのに役立つのではないかと思います。政府や中心となる企業は,筆者の主張にあるような考え方で行動し始めているようです。とすれば,自分や自分の周りで何が起きるか? を,ある程度推測することもできるでしょう。自分が幸せになるための対処方法を考えていく・・・。本書の提言は,そのきっかけにできると言えるかもしれません。


20170908

「人を動かす」 デール・カーネギー 著

 

<概要>

 筆者が,①各分野の専門書から抽出・整理した原則,と,②社会のリーダーへの調査結果,とを集約・融合した「人間関係」に関する原則

①動かすための3原則:その人なりの見方の尊重・自らやりたい気持ちにさせる・その人の立場に立つ

②好かれるための6原則:犬のような誠実さ・笑顔・名前の記憶,聞く,褒める

③説得するための12原則:その人の立場に立ち・議論を避け・対話で相手に勝たせ・誤りは自分のものだけ認め・YESで答えらえる問いかけをし・自ら思いつかせ相談・心情に訴える,穏やかに・自らを演出・同情の立場をとり・競争意識をくすぐる

④変えるための原則:褒め・また褒め・遠回しに注意・自分の過ちを話し・ベターを提案する・面子を大事にし・期待を示し・容易にやれると暗示をかけ・自ら協力させる」

 

 

<ひと言コメント>

目的が明確なら・・・

 

 事例・実例がふんだんに盛り込まれた本著。職業人向けの「教材」として執筆されたものです。だからこそ,「原則だけ」を抽出すると,「なあんだ」と,あたかも当たり前のように感じるかもしれません。が,ただ知るのと,実際にやれるのとでは大違い・・・。「原則」なので,どんな人間関係にでも当然当てはまります。それでも,国同士のトップがこれを使いきれてるか? 

 逆に,到達したいゴールが明確なら,自分がどんなに媚び諂っているように見えても使うべきテクニックである,ともいえるのでは? そして,多くの人が使いきれていないからこそ,使い切れれば,本当に強力な自分の武器になる,差別化のポイントになる,とも言えるかと思います。


20170901

「日本でいちばん大切にしたい会社3」 坂本 光司 著

 

<概要>

 企業が大切にすべきは,社員とその家族・社外社員とその家族・現在顧客と未来顧客・社会的弱者・出資者や支援者の5人の人だという筆者。その典型であり,実際景気を超越・創造した7社の紹介。

「徳武産業:歩くという夢を実現するシューズメーカー

中央タクシー:地元住民が乗って幸せを感じるタクシー

日本レーザー:「雇用」+「会社の成長=社員の成長」で親会社から独立したレーザー関連商社

ラグーナ出版:障がい者と社会とのつながりを作り出した出版社

大谷:障がい者雇用に努める日本最大のはんこ屋

島根電工:公共事業の受け皿から家庭の困り事解決に転換した電気工事業者

清月記:葬儀を生前からのサービスに変えた葬儀社」

 

 

<ひと言コメント>

業界の常識は社会の非常識。そして・・・

 

 本書で紹介される企業は,それぞれ独自の強みを活かした事業を展開しています。その出発点として共通しているのは,業界の常識に立ち向かうこと,と言えそうです。確かに,自分が身を置く業界のサービスについても,「こんなことができたら」「あんなことができたら」は,探せばいくらでも出てきそう,です。

でも,言うは易し。実際にここまでになるには,やり切る・やり抜くには,相当の覚悟が必要でしょう。裏にはドロドロした話もあるはず。でも,だからこそ,理念を大切にし,理念を体現するしくみづくりに徹底的にこだわるという,2つ目の共通点があるのでしょう。また,自分たちの強みを知っている,というより,何を強みにしたいかを徹底して考えている。

本書からの学びは,会社の経営だけではないように思います。会社を「人」に置き換えれば,人生についても同じだ,と言えますから。


20170826

「SUPER BOSS(スーパーボス) 」 シドニー・フィンケルシュタイン 著

 

<概要>

 30のケーススタディから10年以上かけ抽出された,一流の人材を輩出するスーパーボス(=有能なリーダーたち)の特徴的な行動

「スーパーボスには,3つのタイプがある。(1)成功を信じて疑わない情熱主義者,(2)勝利至上主義者=利己的な関心領域の勝利を味合わせることで人を育成,(3)部下の成功を心底気にかける養育者,だ。共通点は,①計画やアイデアを実行するときの自信②負けん気の強さ③たくましい想像力・実現への真剣さ④信条や価値観への誠実さ⑤他者への裏表のなさ⇒ビジネスへのコミット・人と向き合う真剣さ。原石足る人材を採用し,強烈な達成感を味わわせることで育成。ブレないヴィジョンの反面,柔軟な行動でメンバーをリード。人材ネットワークを持ち,メンバーにも惜しみなく提供する。成長のために,自身の,あるいは組織の成長には,スーパーボス足る人材をロールモデルとして探すことだ。12の質問で探せ,自分のスーパーボス度は10の指標で測定できる。」

 

 

<ひと言コメント>

選ぶべきリーダーとは?

 

 いろんなレベルでリーダーはいます。世界の,国の,地域の,会社等組織全体の,部門単位組織の。そして,いろんなタイプのリーダーがいるのも事実でしょう。革新的なリーダー,安定した状態を作り出すリーダー,などなど。本書で示されるスーパーボスと定義されるリーダーは,一流の人材を輩出できるリーダー。「より長く,多くの成果を出し続けるには,組織的であることが必要」。そう考えると,一流の人材を輩出できるスーパーボスは,最高のリーダーと呼べるかもしれません。

 ただ,そんなスーパーボスにも,(1)~(3)のタイプがいるそう。翻って,実際のリーダーはどんな人たちが多いのでしょう? 大きな単位になればなるほど,もちろん全員とは言いませんが(1)(2)の方が多いかも? うーん,この現実は直視した方が良いかも。自分たちが選んでいるリーダーがひょっとしたら間違っているかもしれないのですから。私は圧倒的に(3)を目指したい,ですし,そんなリーダーの皆さまを尊敬しています(笑)


20170819

「北朝鮮―変貌を続ける独裁国家」 平岩 俊司 著

 

<概要>

 日本による植民地支配からの開放以降~金正恩体制に至るまでの,国際情勢との関わりの中での北朝鮮の変態(メタモルフォーゼ)の歴史

「北朝鮮は分断国家という生い立ちを持ち,中ソ陣営の一員として,米・韓・日との対立構造に組み込まれた。金日成は,共産主義としての朝鮮半島統一を最終目標とし,マルクス・レーニン主義を最大限活用。主体思想の下,中ソとの直接的な関係を断ち,国内権力基盤を確立。が,韓国の経済成長・ソウル五輪の成功により後塵を配したこと,ソ連解体・軍が制圧した天安門事件と制圧できなかったルーマニアのチャウシェスク政権崩壊,金正日体制への移行とが,先軍政治へと向かわせた。韓国・金大中政権の太陽政策で,一定期間の南北共存と米・日との関係改善を目指すに見えたが,米・ブッシュ政権の強硬路線で再び軍事力誇示路線に。先軍政治の下,後継となった金正恩は遺訓政治の枠内で始動した」

 

 

<ひと言コメント>

まずは敵を知る

 

 北朝鮮リスクが日に日に高まっています。「ナゼ,あんな行動をするのか?」,理解しにくいのは事実。その主張があまりに独特であること,独特に見えることが大きな理由です。ただ,その歴史を振り返れば,その理由もおぼろげながら見えてきます。そして,自らの存在意義を示せない場合命すら危ないという,金正恩の状況も想像できます。

 いずれにせよ学ぶべきは,何かの行動にはそれまでの経緯や歴史も関係する,ということ。つまり,これまでの世界の行動が,北朝鮮が世界各国を信用せず米国とのみ話したがる理由にもなっているのではないか,ということ。そしてその良し悪しは別として,北朝鮮には目指す国家としての明確な目標があるということ,ではないでしょうか。


20170811

「ご冗談でしょう,ファインマンさん」 R.P.ファインマン 著

 

<概要>

 量子電磁力学の発展への貢献で,ノーベル物理学賞を受賞した著者。その生き方や考え方が表れている,主にプライベートにおけるエピソード集。

「①子ども時代~学生時代:実力を示せば疑っていた人ほど味方になる,堂々とそれっぽいことをすればバレない

②大学院生時代:自分で確かめることが大切,相手が誰だろうと関係なく話したことが自分の信用を買う

③原爆開発時代:戦争は自由人すら国への貢献を考えさせる,他人と違った道具が武器になる,目的がわかり楽しめれば人は働く,事の大きさを正しく想定するためにしくみ(原理)と例(具体化)が必要,執念ともいうべき行動の習慣こそが根気

④コーネル~キャリテク時代:教える=自分の源泉,ガールハントは「決しておごらないこと」,理解する=例が出せる=間違いを見抜く直感が働く

⑤物理学の世界:玄人並みのドラム・絵画・他分野研究=楽しいから続ける,大切なのは科学的であるということにこだわること」など

 

 

<ひと言コメント>

本物はリアリティを伴う

 

 著者は相当面白い(=変わった?)人だということが,紹介されているエピソードの数々からもわかります。どんなに気さくでいたずら好き,人生を心から楽しみたいと思っている人だったとしても,大御所中の大御所が,まさかガールハント術や金庫破りの過去,数々のいたずらの自白なんて,普通はしないでしょう。でも,そのエピソードの数々がとてつもなくリアルだからこそ,学べるものが詰まっているように感じます。

 根気とは? プロとは? 理解するとは? 自分の武器とは? 恐怖とは? 目的を達成することと行動の関係とは? 徹底するとは? 勘定と感情との作用とは? などなどの問いに,表面的な言葉ではない「答え」を与えてくれます。そして,自分の専門領域で誠実であれば,日々の生活や行動,感情にも表れるものだ,ということも。。。確かに抽象的な言葉はとてつもなく陳腐かも。だから,共有すべきはリアリティを伴うエピソードなのかもしれません。

 そして,そんな著者が開発に携わったことを激しく後悔したという原爆。戦争や相手に対する恐怖が,こんな誠実な人ですら惑わしてしまうという事実を,心に留める必要があるのでしょう。


20170804

「21世紀地政学入門」 船橋 洋一 著

 

<概要>

地政学的なモノの見方からの,現在の世界情勢,今後の世界づくり観,日本が取るべき行動の提言。

「世界は,外交・経済・市場他,地政学的リスクが高まっている。それを整理すると,①EUvsロシアはウクライナがキー,②中東はイランとトルコがキー,③EUは南北欧の競争力格差が問題,④中国は習主席という鄧小平以来の指導者の存在と,過去の歴史に対する復讐が行動の動機となっていることがキー,になる。日本がしたいのは,まずは本土を守ること,エネルギーの安定供給,人口問題への対応,なのだから,少なくとも当面は米国の力に頼る必要がある。また,中国の一国主義的台頭の抑制が国際的にも求められているから,インドとの関係づくりとAIIB加盟,TPPによるアジア市場での自由の確保と国内改革,あいまいさを残した近隣諸国との関係づくり,などが重要。最悪のシナリオを描いた上で,セカンドベスト的な解づくりと,それを推進できるリーダーづくりが必要になる」

 

 

<ひと言コメント>

最悪のシナリオづくりと,セカンドベストでの対応という考え方

 

 月刊誌での連載を編集したもの,とのことで,体系的に述べられたものではありませんし,地政学的に深い見方がされているか?という点でも物足りなさを感じる?,提言されている内容も?のものもある,と思います。

 ただ,「セカンドベスト的な対応で臨む」というアイデアは,とても有用だと感じます。「すべてうまくいくことなんてないから」というのもあります。が,それ以上に,「(ベスト・オブ・ベストを求めると)必要以上に対策し過ぎるという悪影響や,安心からくる心理的な問題(=頭の隅にさえその問題を置かなくなる)といった悪影響がある」との指摘。なるほど。この「セカンドベストで対応する」というアイデアは,私たち自身が,自分たちの生活の中でも積極的に取り入れていい考え方ではないか,と思います。


20170729

「日本をもう一度やり直しませんか」 榊原 英資 著

 

<概要>

日本は成熟国家である,という立場から見たグローバリゼーションの本質。また,日本が「日本型成熟国家の先行者」になるという目標を持った場合の国家戦略の見直しの提案。

「成長を前提とした戦略を取り続けることで限界が生じている。目指すべきはヨーロッパ型の再分配社会だ。アジア市場の大きさを考えればアジア中心主義に転換すべき。官は富の再分配とアジアを中心としたグローバル市場への進出こそを支援すべき。環境・安全・健康が成熟国家の特徴でもあり産業推進のポイントでもある。豊かな自然などの日本の特徴も生かしてグローバル市場に進出せよ。」

 

 

<ひと言コメント>

考え方の転換

 

 日本の問題は何か?と問われたとき,なんと答えるべきか? 問題がありすぎてよくわからなくなるのも事実なのですが(苦笑),本質的な課題は「人口減社会である」ということなのかな,と思います。ただ,女性の社会進出が進み,高齢社会に突き進む先進国には共通の事象なのですから,出生率を上げろ!と叫んだところで,こればっかりはどうにもならない,ので,直接解決はできないでしょう。2050年の人口は3300万人減の9500万人。生産年齢人口は3500万人減の4900万人。そんな状況で,「成長させろ!」って言ったって,これまた酷な話,です。おまけに高齢人口は1200万人増の3700万人で,社会保障費は膨らむばかり。。。でも,これが現実です。

 「足るを知る」ことで我慢することは我慢する,「自分の強みを生かす」ことでがんばれるところはがんばる。そして,そのためにもAIを利用する,AIができるところはAIにさせる。。。やはり,発想を本気で転換し(=中長期の視点から物事をとらえる),自分を生かせる方法を探すこと,自分の力を高めること,が,必要だと感じます。


20170721

「良心をもたない人たち」 マーサ・スタウト著

 

<概要>

「良心を持たない人=サイコパス」の具体例・見分け方とその対処方法。

そもそも良心とは,感情的な愛着から生まれる行動を抑制する義務感と言える。良心を持たないサイコパスはアメリカ人の4%。知能が高く野心家・強欲だがそこそこの能力・寄生虫的・暴力的の4パターンがあるが,共通点は「人への関心のなさ」と「自分の野心の達成のためなら何でもする」ということ。「一見魅力的,善良な人を見抜ける,善良な人が自分を責めることを知っている,追いつめられると同情を誘う・脅す・自分が間違っていたのではないかと思わせる」サイコパスは,遺伝的な影響が大きく治らないケースの方が多い。存在を認識し,自分の身を守ることが必要になる。 

 

 

<ひと言コメント>

サイコパスとのつきあい方 ≒ AIとのつきあい方

 

 サイコパスという存在を知ると,つい,「あの人,サイコパスなんじゃ・・・」と勘繰りたくなる下世話な部分が私にはあるのですが・・・(苦笑)。それはさておき,本書のキーワードは,タイトルにもなっている「良心を持たない=良心という感覚がない=失うものがない」。ということは,「サイコパス」は「AI」に置き換えられるのではないでしょうか? なぜなら,AIには「失うものがなく,ただ正解を目指す」から。

 ここで問題になるのは,「何が正解か」ということ。実はこの「何が正解か」が,人間のAIに対する勝ち筋なのではないか? と思うのです。これだけ不確実性の高い世の中ですと,正解など簡単には見つかりませんから。AIを扱う人間に最も必要になる行動は,AIを人間の支配下に置き続けること,そして,「<人間全体の幸せのため ≠ 個人の人間の幸せのため>という正解の教育」,そんな気がしています。


20170714

「権利のための闘争」 イェーリング 著

  

<概要>

「権利=法」感覚の養成,「権利=法」への態度の育成が必要だ,とする,元は法律家向けの講義をまとめた主張。「権利=法」は平和のためにある,が,「権利=法」は,先人による闘争の末に成立,人々に享受されており,品格の理想主義と言えるものだ。人格の侵害,つまり,自分の所有権に対する侵害があった場合には,「権利=法」の行使は,たとえその結果得るものが少なかったとしても,権利を持つ者(=債権者)の義務である。人格侵害があってもそれを放置すれば,「権利=法」意識が弱まり,結果「権利=法」自体が失われていくことになる。社会の利益のために闘う必要があるのだ。

 

 

<ひと言コメント>

「権利=法」は義務との表裏の関係

 

 やたら権利を主張する割に義務を果たさない人,周りにいますよね?(と,感じるのは私だけ?) 逆に義務を果たしているのに権利を主張しない,主張させない風潮も,世の中では蔓延しているかも。これは,自分が所有しているものは何かを意識できていないから,かもしれません。

 森友問題,加計問題,豊洲市場問題,五輪の費用負担問題,JASRACと音楽著作権の問題・・・これらは,誰が何を所有してるのでしょう? 米国の保護主義的動きと他国への影響・・・どの部分が所有権に当たる問題でしょう? そう考えると,「余計なことに首を突っ込みすぎた」り,「必要なことに首を突っ込んでいなかった」り,していそうです。


20170707

「大衆の反逆」 オルテガ 著

 

<概要>

「生きていくだけであればなんとかなるようになった「大衆」は,安易さと自己の論理で数という権力を行使するようになっている。モラルや美徳を理解せず,目先の利益に走る「大衆」は,場当たり的に民主主義を批判する。その結果,膨大な時間をかけて人々が手に入れた精神的で知的な自由を守る闘いが必要になっている」という主張

 

 

<ひと言コメント>

今は今だけで作られたのではない,という事実

 

人の人生は長くても100年程度です。その程度の時間の範囲で起きたことしか実際には体感していません。一方で,人類が誕生したのは700万年前と言います(諸説ありますが)。それだけの長い時間をかけてつかんできたもの,が,今だということ。自由や平等の概念,民主主義などの考え方は,先人の知恵の結晶と言えるもので,その上に乗って私たちは暮らしている。そう考えると著者が「歴史を考えずに,場当たり的に対応する」との批判は耳が痛い・・・。だって,つい数年前に起きた大きな事故すら下手をすると忘れてしまっているのですから・・・。


20170630

「企画脳」 秋元康 著

 

<概要>

売れる・驚かせる・儲かる企画を求められ,出し続けた著者・秋元康氏流の企画術・発想術

1 発想・企画は記憶から始まる,記憶はその人の強み(見方,興味関心)を反映する,メモではない

2 「何かを作る」というゴール(目的)に対して,記憶された素材を「当たり前かどうか?」を基準として外す,残った素材の中から最も合わないものを組み合わせる,組み合わせられる方法を考える

3 嫌われることを恐れず,欲しいと思う人を想像しながら,98%の運と1%の才能と1%の汗を使って4運が来ている時=日常に小さな変化が起きたとき

 

 

<ひと言コメント>

当たり前を外せる力

 

 著者は,知る人ぞ知る大ヒットメーカー・プロデューサーです。そんな人でも「百戦百勝など絶対にありえない」と言います。これはわかっているつもりでも腹までは落ちにくい。人は世に出てきたモノしか見ていない,つまり,世に出てこられなかった「失敗」を意識することは難しいから,です。そうして,「うまくいかない」自分を過小評価し過ぎたり,自己嫌悪に陥ったりするのかもしれません。

 その意味で,根拠があろうがなかろうが「じゃんけんに強い」という自信を持つというメンタリティを大切にすること,「自分の強み」を徹底的に使うこと,「打率3割で」「嫌われることを恐れず」など著者が大切にしていることは,ベースの考え方として必要なのだと思います。

 とはいえ,著者が相当な努力をしているのは明らか(楽しんではいるでしょうけど)。「当たり前を外し」,「嫌う人がいても好きになってくれる誰かを想像しながら」「最も合わないモノ同士を組み合わせて仕上げる」には,当たり前を知ること,嫌われることを恐れない心を作ることが必要なのですから。


20170623

「発明家に学ぶ発想戦略」 エヴァン・I・シュワルツ 著

 

 

<概要>

発明家たちの戦略的な発想パターン

1)アプローチの基本:遊び心,別分野からマネる,人間の習性=スーパーフォース=欲・恐怖・安全・安心などを満たす5W1Hを考える

2)成功を引き寄せる運:幸運な無数のアクシデントをモノにできるのは「準備」

3)具体的なアプローチ法:境界横断・組合せ,生涯を見極め乗り越える,アナロジーの利用,完成図の視覚化,アイデアの積み重ね

 

 

<ひと言コメント>

「知恵」に学ぶ

 

 歴史に学べ,とは,よく言われること。成功も失敗も多くを乗り越え,経験し,今があるから。その意味で「その道のプロ」からは多くの学びがあるものです。ただ,実は多くの人がある分野ではプロのはず,なのです。ただ,その人にとっては,その世界でやること・出来ることは当たり前過ぎて,良さも悪さも気づかない。だからこそ,他分野の人々から学ぶ。大事にしていること,基礎と思っていることを聞く。そして,それがナゼかを聞く。

 発想力という点で言えば,発明家に学ぶことだけでなく,多くの人に学べそう。例えばヒットメーカーの秋元康さんに学ぶとか。他にもいろいろと学び方はありそうです。

 ただ,学んだことを生かして行動に移すことの方が,大切そう,です。


20170616

「心を整える。」 長谷部 誠 著

 

<概要>

サッカー日本代表キャプテンを長く務める著者が,一流であり続けるために実践している心構えと行動・56の原則

最高のパフォーマンスのために,ピアノの調律のイメージを持って「心を整える」という原則を持ち,原則ベースの行動をすることを大切にしている,というのが,著者が実践し続けていることだ

 

 

<ひと言コメント>

一流のアスリートから「社会で生き残るヒント」を学ぶ

 

 単純なものは,基礎基本が学びやすいものです。スポーツの世界は,ある意味では非常に単純な社会です。個人スポーツは,周囲との競争,相手との戦いという社会。チームスポーツでも,チームの調和という要素が加わるだけの社会だから,です(実際には,そんなに単純ではないですし,非常に厳しい世界なのですが・・・)。そんな社会の1つ,サッカー界で,ご自身曰く,選手としての強い個性があるわけでもないのに,日本代表チームのキャプテンを長く任されてきた著者。そんな著者が大切にしていることには,単純な社会での知恵だからこそ,一般的な社会を生き抜くための基本的な知恵になりえる,と言えるのではないでしょうか。

 恐らく,著者がサッカー界での生き残りのためにまず考えたことは,得意を生かすこと,と,ポジショニングだったのでは? そこから理想の自分を描き,その像に近づく努力をする。そして,その時点で到達している自分が最高のパフォーマンスを発揮する努力をする。「心を整えること」は,そんな努力をし続けられるために必要な原則なのだ,と読むとよいのではないかと思います。

 「7つの習慣」と合わせて読むと理解が深まりそうですし,「では自分はどうするか?」を考えるきっかけにできそう,です。


20170609

「イスラム国 テロリストが国家をつくる時」 ロレッタ・ナポリオーニ著

 

<概要>

「イスラム国とは?」の本質とその解決方法の考察

「欧米の後ろ盾を得たアラブの指導者・独裁者の支配や隣国からの経済制裁などに苦しんだ人々」「過去のテロ組織に幻滅した人々」が,最新のテクノロジーとソーシャルメディアを駆使して現代的な政治イメージを演出している「イスラム国」に共感している。つまり,多極化した今日の世界秩序の産物に「適応」し「活用」したのがイスラム国だ。つまり,武力によるアプローチでイスラム国を倒せたとしても,第2のイスラム国が出現するだろう。だから,流血のない方法による体制変更で使われてきた手段を見直し,利用するべきだ。

 

 

<ひと言コメント>

相手を正しく見る = 課題を正確にとらえる

 

 「イスラム国(IS)が掃討されたら,世界からテロはなくなる」でしょうか? 本書での指摘は,「このままでは,テロは絶対になくならない」,というもの。非常に悲しいことですが,恐らくそうだろうと思わせるだけの説得力があります。

 テロという問題は,解決したい課題です。ただ,解決したい課題は,他にもたくさんあります。日本の課題で言えば,たとえば北朝鮮問題。そんな大きなことでなく,自分のことでも,多くの方が解決したい課題をお持ちでしょう。ここで学びたいのは,「課題を丁寧にとらえれば,課題の本質が見えてくる。だから,解決のアプローチが見えてくる」ということ。まずは「敵を知る」とでも言いますか。

 課題があれば,すぐに手を打ちたくなるもの。でもそれが,かえって課題を複雑にしたり,事を大きくしたり,することもありそうです。「どんな歴史や背景があって,その課題が起きているのか?」「課題がなくなったとき,他の課題が発生しないか?」,一瞬立ち止まって考えてみることが大切なのかもしれませんね。


20170602

「「権力」を握る人の法則」/影響力のマネジメント」 J.フェファー 著

 

<概要>

権力を目指すことのススメ。社会で生き抜くために競争は避けられない。そのとき直面するであろう「政治」を巧みに切り抜けるには権力が必要。権力を握り,行使するにはコツがある。

1) 資質として,決意・エネルギー・集中(=意志の力)自己推察・自信・共感力・闘争心の7つが必要

2) どこで権力を握るかという場所選び,必要な人脈づくりを戦略的に行う

3) 権力を行使しつづけるには,その立ち居・振る舞いも重要

4) 負けたときの負け方にもこだわる,次につなぐこと

ただし,権力を握ると,監視される・時間の自由を失う・多大な時間とエネルギーを取られる・人を信じられなくなる・権力の中毒性に悩む,という代償がある。

 

 

<ひと言コメント>

自分の理想の下で生き続けるか,自分の理想を作るために自分の理想を棚上げするか

 

 私が某大手教育企業の課長職に就いたとき,とある先輩に「この企業の課長になるということは,それだけの実力があるということ,実力を認められたということ」と言われました。と同時に「これから先は実力の世界じゃない」とも。

 企業体レベルでも,何かをしようと思えば,障壁が出てきます。なぜなら,利害が確実に対立するようにできているから,です。例えば,全員が「今はいいけど,将来はマズイ」と思っていたとしても,「今,その対策をするか,しないか」では,意見は対立するわけです。それでも,「今,対策をすべき」と考えているのなら,何とかして今やれるようにするしかない。そのとき,権力(と言っていいかは別問題として)を持っていることが,あるいは権力を持っている人を動かすことが,障壁を取り除き,前に進むためには必要になってきます。つまり,権力を握る努力をするか,権力を持っている人にすり寄るか・・・です。

 筆者は,「公正・公平は幻想」だと指摘します。確かに,実際に公正・公平でないから,目指す目標になるわけです。「公正・公平を実現するために,権力を利用する」「その行動ができる人,が,公正・公平の社会を実現できる人」。これは,大きなジレンマかもしれませんね。


20170526

「できる社員は「やり過ごす」」 高橋 伸夫 著

 

<概要>

「やり過ごし」「尻ぬぐい」は,これまでに生き残ってきた日本企業の企業システムであり価値観(=強み)だ(≒年功序列の意味)。優秀な社員は優先順位化能力が高いため,その結果企業が存続できた。ただこのしくみは係長クラスの仕事とストレスが過多であるため,結果見通しの立ちやすい日本型システムが作られていった」とする日本企業の特徴の分析結果・学術書の一般普及版

 

 

<ひと言コメント>

優先順位づけする能力の重要性

 

 「給与は,自分の能力や実績に対して支払われている」と思われている方はどの程度いらっしゃるのでしょう? 「あの人と自分は同じかそれ以上の仕事をしているのに・・・」と思われている方も多数いらっしゃるのではないかと思いますが,いかがでしょう? 

 本書の指摘は,「賃金と能力とは無関係」「給与が先に決まり,役職をつける。その役職に見合った能力が求められた」というのが正しい因果関係で,それが日本企業の強みだった,というもの。なるほど・・・。

 では,この分析が正しいとして,「その結果である現状」に納得できるものでしょうか? 納得できたとして,さて,どうしたもんでしょうか? 一つの答えは,自分にとって有利に働くような優先順位で仕事をする,ということでしょう。それができる立場になるために,地力をつける期間(=我慢の時間)は必要でしょうけど。

 ただ,そういう生き方ができないということであれば,自分の優先順位と合致する会社を探すか,独立して自分でやるか,給与面では文句を言わないか,会社自体を変えるか,しかないのかもしれません。とすると,結果的に自分にとって重要なことを「優先順位づけ」して,決めるしかない。。。すごいパラドックスだと思うのは,私だけでしょうか?


20170519

「情報セキュリティ管理士認定試験公式テキスト」 五十嵐 聡著

 

<概要>

セキュリティ対策の管理職やリーダーとして必要な知識を持つことを認定する「情報セキュリティ管理士認定試験」の公式テキスト。IT進化に伴う社会では,情報セキュリティリスクへの対策や管理が必須。性質上「完全」な方法はないが,リスクを低減する方法はある。個別の状況に合わせ検討し,対策推進していくためには,情報セキュリティを体系的に理解することが必要。必要な知識は,①情報セキュリティとは何か? と,その必要性 ②媒体別情報資産分類とそれぞれのリスク・対策 ③情報セキュリティ管理に必要なコンピュータ知識,である

 

 

<ひと言コメント>

情報セキュリティを学びつつ,整理方法も学ぶ

 

 情報セキュリティとは,自分たちにとって価値を生む情報という資産を守る方法,と言えばよいかと思います。では,「情報セキュリティの管理に何が必要か?」と問われたとき,どんなことを考えるでしょうか? 技術的な要素を除けば,自分の情報資産を例に,ゆっくり,時間をかけて考えることで,答えを出せるのではないかと思います。しかし,①過不足なく ②短時間で という条件がついたらどうでしょう? 本書は,この条件を満たしながら先の問いへの答えを出せる,情報セキュリティ管理の基礎が学べるテキストと言えます。

 また,本書からはもう1つ学べることがあるように思います。公式テキストの類は,目的に対して,必要な観点が過不足なく書かれている,という特徴があります。つまり,この本で提示される観点抽出や課題整理の「パターン」は,「必要な観点を過不足なく洗い出す・考える方法」=「思考パターン(整理方法)」として使える,ということになるのではないか? ということです。何か勉強されていることがあるようなら,一石二鳥,狙ってみませんか? 

 ちなみに本書で見られるパターンは,次のようになっています。

1) 項目=①情報を持つ目的 ②①の目的達成のために必要となる要素 ③要素ごとに想定される(リスクを含めた)課題 ④課題に対して実行すべきこと

2) 項目の分解=5W1H


20170512

「グローバリズム以降」 エマニュエル・トッド著

 

<概要>

「1)先進諸国は,エリートが社会を牽引するような伝統的社会システムが崩壊に向かっている。過去に参考になるような課題解決策がない社会になっているということだ(=人類史上でも例を見ない転換期にいる)。これが,今の世界の最大の問題点だ。

2)中東地域の不安定さは,先進国が歩んだ歴史と同じものだから,発生する課題には歴史上に解決策がある。ただ,先進諸国と発展段階(近代化段階)に差があるという点では過去に例がない。これがテロなどの形で別の軋轢や課題を生んでいる。

3)先進国の中で唯一帝国化したアメリカは,①超個人主義・自己愛を土台にした自由貿易主義というイデオロギーと,②金融派生商品など,実際にはどんな価値を生み出しているのかわからない「生産性」至上主義を振りかざした。アメリカは,問題を起こすことはあっても解決策を提示できなくなっている。

 

以上を前提に,世界の出来事を見つめ,課題として分類,解決策を考えていく必要がある」とする,歴史人口学と家庭人類学の視点からの世界の分析

 

 

<ひと言コメント>

自分の強み(=専門分野)から物事を見るという手法

 

 1998年から2016年までに起きた世界的事件や事象について,朝日新聞記者が「どう見ればいいのか?」を質問し,仏の歴史人口学者・家庭人類学者である超知識人トッド氏が答えるという形式の書。本のタイトル「朝日新聞記者,世界の見方を仏の知識人・トッド氏に学ぶ」,著者「朝日新聞社記者有志」と言った方が実態を表しています。結果,朝日新聞社や記者が持つイデオロギーや知識レベル等の影響は避けられず,解説レベルのバラツキ・軽重も含め,決して読みやすい本ではない,です。

 とはいえ,著者(?)であるトッド氏の歴史人口学・家庭人類学の視点からの世界の分析は,「日本は核兵器を持つ(ことを通じて,世界の平和へのメッセージを送る)べき」というような斬新な解決策をも提示しています。要は,目的に対してどんな手段を取るか? その手段は,伝統的社会システムが崩壊に至っている以上,既成概念にとらわれるべきでない,という主張になるかと思います。

その内容もさることながら,自分の強みを使って物事をとらえる,解決策を見出すというアプローチは,私たちが世界を考えるときはもちろん,個人的な問題を考え,答えを出していくときにでも使える方法なのではないでしょうか?


20170505

「永遠平和のために」 カント著

 

<概要>

「永遠平和は机上の空論ではない。確かに今は,平和は自然状態とは言えず,創設されるものだ。ただ,そうであっても理論的な6つの条件(①戦争の種を残さない平和条約締結②他国侵略の禁止③常備軍の全廃④戦争国債の発行禁止⑤内政への武力干渉禁止⑥将来に禍根を残さない)と,実践的な3つの条件(①すべての市民が,自由・法の下に従属・平等の原則に基づく共和的体制に属す②連合性による国際法と各国の自由の保障③各国間の往来の自由)を満たせば,平和は実現できる。さらに,自然の摂理に従えば,いつかは必ず平和が自然状態になる」という主張

 

 

<ひと言コメント>

永遠平和を実現するための条件と論理展開に注目

 

 日本では憲法の制定から70年を迎え,憲法改正が話題となっています。世界各地での安全保障上の問題と日本の世界に果たす役割という視点からも,やはり注目を集めるのは,第9条の平和主義の扱い,でしょう。憲法は国が守らねばならない法と言え,国民が守らねばならない一般の法律とは主旨が異なります。国を運営する人々が「変えたい」という意志を持つということは,何らかの不具合があるから,自分たちの行動を規定する,あるいは規制するルールを変えたい,ということでもあります。

 カントの指摘は「平和状態は(少なくとも現段階では)自然状態ではない=平和は創設されるもの」。つまり,「自分たちがそれを求めない限り,少なくとも今は平和を実現できない。ただ,どれだけの時間がかかろうと,いつかは必ず実現する」というもの。だとしたとき,日本は歴史も踏まえ何をすべきなのでしょう? 現実を見て国を運営する人々が何らかの行動をしやすいよう憲法を変えるのか? それとも,ありたい姿を求める姿勢を貫くのか? 私たちの態度が試されているのでしょう。ちなみに,ここで展開されている論は,カントの割にはやさしい,ので(苦笑),論理展開を学ぶ教科書にもできるかな,と思います。


20170428

「激動予測」/「続・100年予測」 ジョージ・フリードマン著

 

<概要>

「実質的に唯一の大国で帝国化してしまったアメリカ。今後の10年で(2010年時点)で,そのアメリカが取るべき・取るだろう戦略と,その結果としての世界への影響の予測。大統領の権力を利用したマキャベリ流の現実主義的行動を取り,世界の各地域ごとでの均衡を保つことが,アメリカにとっての国土の安全(地政学の視点)と経済的利益を最大化する。地域ごとの均衡を保とうとするアメリカの行動が,そのまま世界の情勢にも影響を与える」とする見解

 

 

<ひと言コメント>

不確実性の高い世の中を,「アメリカの利益」という視点から予測

 

 日本はアメリカを通じてしかモノを見ていない,と言われます。では,アメリカが考えていることは理解できているのでしょうか? 本書で指摘されている10年間の予測は(タイトルは「続・100年」とありますが,10年の予測です),読み換えも必要という前提ではありつつ,多くが的中してします。とすると,「アメリカが考えていることが何か?」を知ることが将来を見通すために有効である,ということでしょう。日本がアメリカから,「ある意味で最も危険な国」でありつつ,エネルギー確保の面と安全保障の問題からアメリカに従わざるを得ない状況にある,という指摘も,心中穏やかでないと感じられる方も多いかもしれませんが,見方としては重要な指摘,かと思います。

 また,他者の利益を考えれば,どう行動するかを相応の精度で予測可能,ということでもあるわけで,世の中における人間関係づくりにも役立てられる見方,と言えるのではないでしょうか。


20170421

「うんこ漢字ドリル」 文響社 編

 

<概要>

3018例文すべてに「うんこ」を用いた小学1~6年生向け学年別自学自習用漢字ドリル。新学習指導要領に対応

 

 

<ひと言コメント>

商品開発・マーケティングとは何か? 学習とは何か? を考えさせられるドリル型書籍

 

 商品開発・マーケティングの現場では「顧客目線」「顧客課題の解決」などが語られます。が,これを実感レベルに高めることはできているでしょうか? 学習について,「知識」「活用力」「思考力」と「動機づけ含めた習慣化・自ら学ぶ力」が重要であるとされていますが,同じく実感レベルではどうなのでしょう?

 本ドリルはクレヨンしんちゃんが大好きな小学生(恐らくメインターゲットは男子)の興味・関心・大好きなものに徹底的にこだわり,学習が決して苦痛なものではないということを,学習する小学生が「リアルに想像できる=学習動機づけできる=行動を起こせる」教材としてはお手本と言えそうです。

 もちろん,「けしからん」と考えられる方はたくさんいらっしゃるでしょう。学校現場で採用されることもないかもしれません。私も「漢字のドリル」としてはできれば手を出したくない(苦笑)。ですが,そもそも「全員が好き」などということはないですし,本来の学習の「目的=効果」という面を考えれば,「手段」に制約をかける必要は,安全・法順守以外にはないかもしれません。

 小学生が,「今日もやりたい」と手に取る様子が,大爆笑しながら学習している様子が,やりきったときの様子が,友だち同士で語らい合う様子が,本当にリアルに思い浮かぶ本書。でも・・・世に出すまでには,相当の議論があっただろうな・・・(苦笑)。その意味でも出版までこぎつけた皆さんの努力とその成果に脱帽,です。

※ちなみに,全部やったら修了証,利用上の注意(人の嫌がることをするな! など),保護者の方への意図や効果の説明など,教育上の配慮もされています


20170414

「7つの習慣」 スティーブン・R. コヴィー 著

 

<概要>

普遍的な原則に基づく,依存している状態から,自立し,相互依存の関係まで高めるための7つの習慣

①3つの私的成功習慣(主体性+人生の目的の明確化+優先順位づけ)

②3つの公的成功習慣(WIN‐WINの関係づくり+相手を理解することから+相乗効果へ高める)

③バランスを保つための個人の能力(肉体・精神・知性・社会と情緒)の改善のための習慣

を身につけ,それぞれ高め続ければ人生の成功につながる」とする提案

 

 

<ひと言コメント>

自分ファーストは他者ファーストでもある

 

 自己啓発本の中でも最も読み継がれているものの一つが,この「7つの習慣」です。多くの方が読まれたのではないかと思います。本書のメインの主張は「自分の成功を目指すなら,自分のやりたいことを見極めたうえで自分の態度を改めよ,そして他者を尊重する態度を継続することで,初めて成功の階段を昇ることができる」ということでしょう。

 習慣と呼べるようになるまでには,相当のハードルがあるのは事実でしょう(少なくとも私はまだまだ)。それでもやるだけの価値はある,というより,一人ひとりが強くなるには必須の努力でしょうし,習慣なのだと思います。


20170407

「私の個人主義」 夏目漱石 著

 

<概要>

西洋思想を取り入れた明治時代の社会の変化とその危うさ,人のあり方に関する忠告。①現代文明の本質は専門化・分業化=一人では生きられない,②現代日本の開化は外発的開化=上滑りの開化,③中身は形式に先立つ・変化の時代は内面の変化を生む,④文芸は道徳と密接な関係にある,⑤個人主義(=党派心のない理非のある主義)のススメ

 

 

<ひと言コメント>

今の時代にも通じる「大きな変化の時代」の本質と個人のあり方

 

 漱石と言えば,「吾輩は猫である」「こころ」などで有名ですが,これは学生向けの5つの講演を評論文としてまとめたもの,で,私の大好きな書です。明治維新という大きな変化が起きた時代,この時代の変化の本質(①)・変化の実態(②)・変化がもたらすもの(③)・その中で文芸が果たす役割(④)を示すとともに,そんな変化の時代への向き合い方・態度(⑤)を提案しています。

 漱石は,英国への留学で心身を患いました。本書でも示されるこの鋭い洞察力と傷つきやすさとがその原因とも言われますが,だからこそ,その体験をも背景とした提案は,「第4次産業革命の時代」と言われる今の時代でも大いに参考になるのではないでしょうか。


20170331

「本質を見抜く力」 竹村公太郎/養老 孟司 著

 

<概要>

すでにキャッチアップの時代は終わっている。が,すべてを情報に頼ろうとする課題解決へのアプローチはキャッチアップの時代のママ。だから日本社会は課題の解決策を見出せない。概念からではなく,エネルギー・環境や食料という具体的なモノから考えるというアプローチが,今の時代の課題解決のアプローチだ」とする提案

 

 

<ひと言コメント>

キャッチアップ時代の課題解決アプローチから脱却し,エネルギー・環境・食料というモノから解決策を考える

 

 私たちは全体の方向感や状態とは関係なく,「その時点の個別の問題」を課題としてとらえがち。もちろんしらみつぶしに課題解決するというアプローチもあるでしょうし,それが有効な場合もあります。しかし,解決策同士の利害が対立することも,一度は解決したと思われた問題が再燃したり新たな問題・課題を生んでしまうということも,あります。だからこそ,「本質をとらえる」ということが重要なのでしょう。

 二人の著者は,現代の本質課題を「解決へのアプローチがキャッチアップの時代のママであること」ととらえているようです。安倍政権は「成長」を目標に掲げていますが,それは「成長しない現実があるから」でしょう。成長させるための策を考えているわけですが,「成長しないこと」を前提にしたら? 確かに解決策は変わりそう,です。踏み出す方向が全く違いますもの・・・ね。


20170324

「ブロックチェーン・レボリューション」 ドン・タプスコット/アレックス・タプスコット 著

 

<概要>

「ビットコインの中心技術「ブロックチェーン」は金融だけのための技術ではない。全取引に関わる情報がネットワーク上に分散して蓄積されることはセキュリティや公正さなどを担保するから,その技術の適用・転用・応用は,世界を変える可能性すらある。だから,技術面での課題解決はもちろん,「どこまでどう使うのか?」という社会的なコンセンサスを得ることが最大の課題となる」という技術の見方

 

 

<ひと言コメント>

テクノロジーは人間や世界のあり方を変えられるか?

 

「所有権」は人の権利の中でも最も古い概念の一つとされますが(自由や平等と比較してみてください),その正当性の保障・保証は難しい面もあります。利害が対立するから,です。すると,「だったら,それを主張する根拠を示せ!」という争いに当然発展していきます。このとき,「正しい情報」がなければ証明しようがありません。

ブロックチェーン技術が注目を集めるのは「全記録を残す」「ネットワーク上に(分散して)」という方法であり考え方。「情報の欠損や改ざんがない」状態にすることで世界中の「取引・記録」にまつわる課題を解決できる可能性があるから,です。少なくともデータ化された世界では・・・。

これは価値観が変わります。「自分を守るためには証拠を残した方がいい」と考えるなら,「(会話なども含めて)テクノロジーを通してあらゆる取引・記録を残した方がいい」という発想になります。それを拡張すると・・・うーん,どうもSF映画としてのマトリックスの世界の話がまんざら絵空事でもないような・・・。


20170317

「職業としての政治」 マックス・ヴェーバー 著

 

<概要>

「職業として政治をするとはどういうことか? 政治支配は報酬と名誉を与えられることが前提だから政治の本質は権力だ。政治は直接支配から間接支配へと変遷した,とすると今の政治には集客力と雄弁さが必要になる。そんな政治の世界において政治を行う者は,心情倫理と責任倫理の対立という倫理の限界を自覚する必要があり,情熱・責任感・判断力を持っている必要がある」とする論

 

 

<ひと言コメント>

人間が判断・行動するにあたって自覚すべきこと

 

歴史的名著の1つとされているマックス・ウェーバーの著。「政治支配」の部分を「企業」に置き換えても十分に話が通じるように感じます。では,「個人」に置き換えることはできるでしょうか?

ITの進化で個人と組織,個人と個人が結びつく世の中になりました。この動きは,ブロックチェーンなどの技術でさらに進むことが予測されます。とすると,自分自身ですら,自分による直接支配から,周囲を介した間接支配に変化していく可能性は否定できません。とすると,社会で自分が生きようとするとき,自分の気持ちと自分が果たす役割との間で対立が発生するという自覚が必要で,自分の人生を生きるための力を持つことが大切になる,と読み換えられます。となると,自分自身の棚卸も含め,相当な覚悟が必要になると言えるかもしれません。


20170310

「これからの「正義」の話をしよう」 マイケル・サンデル 著

 

<概要>

 「「正義」へのアプローチには,1福祉:功利主義的発想=最大多数の最大幸福,2自由:自由(市場)主義的発想=個人の選択の尊重,3美徳:哲学的アプローチ=美徳の涵養と共通善の論理的な組み立て,の3つのアプローチがある。最も有力なアプローチは3である。ただ「3を支持し政治に取り入れる=公的な言説とする」としたときに「意見の対立」が予想される。だから,自分の考えをまとめること,それを分析し高めることが必要だ」とする提案

 

 

<ひと言コメント>

唯一の正義はあり得るのか? さまざまな「問い」を通じて自分の考えを深める

 

講義がTV番組化されたことでも話題になったハーバード大学教授による著書。「正義」というと,どうしても思い出すのは子どもの頃によく見たマンガ・アニメ・戦隊モノ。そこには「正義の味方 VS 悪の組織」という世界観が広がっていました。が,世の中,そんな単純なものであるはずもなく,めざす理想や立場などが違うなら「正義」も異なる・・・。著者は3つのうち「美徳」からのアプローチを支持,議論を通じて政治に取り入れようとする立場です(その課題も提示されていますので,公正!(笑))。本書で提示される「問い」に自分なりに回答,その理由を考えると「自分の考えの論拠の甘さ」を指摘される(苦笑)のは,TVと同じ。「自分で考える,とは?」「考え深めることの大切さ」を学べると同時に,正義に関する議論に限らず,幅広く応用できる手法としても勉強になる一冊です。ちなみに私の著者への質問は「現代に生きる人たちが議論した結果『正義の共通の基準』が作れたとして,それは過去・現在・未来を代表すると言えるのか?」という点,です。


20170303

「戦争プロパガンダ 10の法則」 アンヌ・モレリ著

 

<概要>

自国の戦闘を正当化し世の中を誘導するプロパガンダに共通する10の法則。

法則を知り,自国の正当性を「疑う」ことが「監視の役割」を果たす第一歩となる」とする論

 

「1われわれは戦争をしたくない」「2しかし敵側が一方的に戦争を望んだ」ことを訴え,「3敵の指導者は悪魔のような人間だ」と信じ込ませる,「4われわれは偉大な使命のために戦う」必要があるのだ,「5犠牲を出すこともある」が「6敵は卑劣な行為を用いているから」なのだ,とはいえ「7受けた被害は小さく,敵に甚大な被害を与えている」「8芸術家や知識人たちも正義の戦いを支持」しており,「9我々の大義は神聖なもの」だから,「10この正義に疑問を投げかける者は裏切り者である」

 

 

<ひと言コメント>

情報を疑う目を養うこと,を意識させられる一冊

 

ベルギーの歴史学者の書,で,戦争におけるプロパガンダ(特定の方向へと思想や世論,意識や行動を誘導する意図を持った行為)の共通点をまとめたもの,です。正直抽出された法則そのものは「当たり前」に感じられます。でも,この法則は「あらゆる利害対立の場面で用いられている」とした場合,私たちはこの法則にあてはめて「疑う」ことができているでしょうか? 「疑う」ための何らかの武器,たとえば,情報入手,そのスクリーニングといった知識やスキルの獲得はもちろん,ありたい社会の姿を描くこと,自分の倫理観や使命感を磨くこと,そして,価値観を発信していくこと,も大切なように感じます。


20170224

「2045年問題 コンピュータが人類を超える日」 松田卓也著

 

<概要>

「コンピュータが人類の能力を超える」とされる2045年(特異点/シンギュラリティ)問題。単にスピードの問題ではなく,人間の生活を質的に大きな変革をもたらすもの。SFの世界の話が現実になる可能性がある。同問題の筆頭論者カーツワイルの説の概要を示しつつ,世界の『成長の限界』も踏まえ,一人ひとり・国家レベルで,「近い将来どんな世の中を目指すのか?」そして「コンピュータをどう使うのか?」を考える必要がある」とする主張

 

 

<ひと言コメント>

幸福や豊かさ観の見直しを問いかける書。複数の論を比較することが大切

 

本書は啓文堂書店の「2013年新書大賞 第1位」だそうで,読まれた方も多いかもしれません。2045年問題の概要解説の形をとってはいるのですが,そもそもの問題として,一人ひとりが,あるいは国が,「いい加減,幸福や豊かさについてありたい姿を真剣に考えるべきだ」という,筆者の課題意識を感じられる書です。

AIが様々な仕事に導入されるようになったとのニュースを日々目にします。その事実だけからでも,IT技術の進展が私たちの生活に大きな影響を与えることは直感的に理解できます。とはいえそれがどの程度のものなのか,は,なかなか想像しづらいところでもあります。だからこそ,筆者の提案する「真剣な議論」に向けて,IT技術の発展度合いやその可能性などは複数の論を見ることが欠かせない,とも思います(もちろん本書内の解説の原典にあたることも含めて)。


20170217

「アメリカが劣化した本当の理由」 コリン・ジョーンズ著

 

<概要>

「アメリカが劣化したのは,民主主義と合わないアメリカ合衆国憲法にある。連合機構の位置づけで成立したという背景,結果上位概念と言いつつ州法との関連でしか成立していないため極端に判例依存,判例依存が司法の権力を増大させることにもつながり,最終司法の多数決のためおかしな論理の判断がまかり通る」という見方

 

 

<ひと言コメント>

アメリカの判断・行動の問題点を,アメリカ合衆国の生い立ちに依存する合衆国憲法の問題に求める書

 

アメリカで司法判断に持ち込まれた場合,最終的には民主党派VS共和党派の最高裁判事の多数決で決まるのですが,最高裁判事は定年無! 大統領が指名し上院の過半数の承認で任命されるので,最高裁判事が空席になったときが多数派工作のチャンスなのです。2017年2月時点でアメリカは両院ともに共和党が過半数の議席を確保していて,かつ,最高裁判事も過半数にできる状況。共和党出のトランプ大統領のなんと強い基盤! 自制しない限りは何でもできそうな状況なのだ,ということは頭に入れておいた方が良さそうです。


20170211

「転換期の日本へ―「パックス・アメリカーナ」か「パックス・アジア」か」 ジョン・W・ダワー/ ガバン・マコーマック

 

<概要>

「アメリカの思惑の下構築されたサンフランシスコ(SF)体制(=パックスアメリカーナ)。日本は属国としての役割を果たしてきた。結果,アメリカの協力圧力に抗えない。中心を東アジアに移すとき。その第一歩はアジア諸国との友好関係づくりである」とする日本の取るべき政策論

 

 

<ひと言コメント>

アメリカとの関係重視からアジアとの関係重視で日本は未来を築け!とする提案

 

外国人日本研究専門家の提言をまとめた書。それぞれの論文ベースの論説と対談とで構成されています。二択問題でも実際はないのでしょうが,そうでなくても提案されている「視点」を取り入れるには,「国民の対各国への意識,親近感「無」中国80%・韓国59%,親近感「有」にアメリカ84%」という「地理的環境から見た時には考えられない現実」を直視すること,が重要かもしれません。


20170204

「新・観光立国論」 デービッド・アトキンソン著

 

<概要>

「経済成長のためには,日本は観光立国すべきだ。2030年までに訪日客8200万人を呼び込むだけのポテンシャルがある。実現には欧米の富裕層を呼び込むことだ。だが現在のアピールは的が外れている。お客様にすべき欧米人視点で具体的な策を打てば,目標達成できる」とする日本の分析結果

 

 

<ひと言コメント>

論理展開の勉強になる書

 

ベストセラーにもなった元ゴールドマン・サックスのアナリストの著なので,読まれた方も多いかもしれません。論をどのように展開すればわかりやすいのか,を教えてくれます。なお,2015年のヨーロッパ・北米・オセアニアからの訪日客は300万人程度,アジアからは1600万人,というのが実態です。


20170128

「君主論」 マキャベリ著

 

<概要>

「権力を持つ者,特に君主や君主国家の分析から,君主かくあるべし」をまとめた提案

「権力を持つ君主はいわゆる聖人君子のような理想主義的なものである必要はない。民衆の特性や自身の君主への成り方も考慮し,民衆をどんな方法であっても敵にしない手段を講ぜよ」とする現実的な対処法

 

 

<ひと言コメント>

現実的になるとはどういうことか? を語る古典的名著

 

「愛されるより恐れられよ」「武装した預言者は勝利し,武器なき預言者は破滅する」など,言葉だけが独り歩きする部分も多く,批判的な意見も聞かれるマキャベリの論。ただ,「超現実的に考えたときどうするのが最も効果的なのかのみに限定している」論なので,個々のことばを云々すると本質を見誤るかもしれません。実は優しい人だった,というようなオチがあると,親しみやすい気もするのですが・・・(苦笑)


20170121

「奴隷のしつけ方」 マルクス・シドニウス・ファルクス著

 

<概要>

紀元前から15世紀まで続いた古代ローマの社会基盤であった奴隷制について

主人であるローマ人が奴隷の管理法やその基本的な考え方を示した教訓,古代ローマ時代の現実

 

 

<ひと言コメント>

「もしかしたら自分も奴隷?」

 

ケンブリッジ大で教鞭をとる歴史家である筆者が,古代ローマ人にその時代の奴隷管理法を語らせるというスタイルで書かれています。その賛否について筆者がどの立場にいるか,は明らかにされていませんが,私たちに対して「どうしても伝えたい想い」があるような気がしてなりません。


20170114

「対米交渉のすごい国」 櫻田 大造著

 

<概要>

カナダ・メキシコ・ニュージーランドという3つの相対的弱小国の過去の対アメリカ交渉に学ぶ強者に勝つ実行可能な交渉術・鉄則=①各層レベル間での関係づくり②ルールベースでの交渉③相手の立場④ヒトとしての最低限を守る

 

 

<ひと言コメント>

まっとうな交渉を行うためのまっとうな方法は,過去や他者に学べ!

 

アメリカ国民が選んだトランプ大統領とその政権,各国はそんなアメリカと対峙していく時代を迎えています。少なくとも4年間は,この環境にあることに変わりはありません。ではどうするか? 先人の知恵に学ぶのがもっとも有効な方法の一つと思います。もちろんこれは国の話。でも,個人でも同じなのではないか?と思いもします。


20170107

「道は開ける」 D.カーネギー著

 

<概要>

「悩み」という問題を解決するため筆者が各分野の専門書から抽出・整理した原則,と,筆者の教え子たちの実践・応用から得られた結果,とを集約・融合した「悩み事の解消方法・悩みを断つ/予防する習慣」

 

 

<ひと言コメント>

自分がやれることをやる! 多くの事例が教える悩みの解決法

 

人生論としてあまりに有名な本書。ただ,日々の生活に追われたとき,これを忘れずに本当に実行できるか?と問われると,なかなか続けられないのも現実のように思います。だからこそ,新しい年の初めに改めて読んでみる,というのもリフレッシュにつながるように感じます。1冊読みきるのは大変かもしれませんが,ポイントだけいつでも見られるところに置いておく・・・そんな書でもあるかな,と思います